15.8 G1 観戦記

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今年のG1は「極みの夏」というキャッチフレーズだ。28日間で19戦。25回目の記念大会として過去最長の大会となった。
懸案の優勝戦も無事に両国国技館で開催されることになった。しかも久々のしかも金土日の文字通りの“両国3連戦”だ。
これはもう例年の2ブロックではなく4ブロックの大規模大会で、出向中の鈴木軍はもちろん、NOAHをはじめとする他団体やガイジンも総出の大会か~?と期待は膨らんだ。
しかし結局ブロックは2つで公式戦は交互に開催される選手思いの日程となった。公式戦のない日は休日かというとそうはいかず巡業してタッグ戦に臨むのであるが、それが概ね次の公式戦の前哨戦カードなため気が抜けない。また毎年仕事がない非G1戦士やジュニア戦士の試合もあるので見る側も程よく楽しめる。これが全試合公式戦だと見る側も疲れてしまいダメージも相当なもの…。
また「G1には魔物が棲んでいる」と言われていたように、今大会は怪我人が続出した。中でも公式戦で天山が矢野に放ったダイビングヘッドが肩口ではなく思い切り頭に誤爆し、それぞれ12、14針縫う事態が起きた。それでも休まず完走したのであるからレスラーは凄い。一時流行った格闘技だと試合は中断でそのまま離脱だろう。それと中邑も肘の怪我で戦線離脱してから復帰してのファイナリストという離れ業…。他にも永田は脇腹を序盤で痛めたまま、柴田も大会前は欠場する体調だったがそれぞれ完走した。
G1後は急に涼しい夏になったが期間中は記録的猛暑続きの全国行脚…一発勝負のタイトル戦とは違い、単なる強さではなく体調管理や猛暑対策等総合力がないと勝てない世界一過酷なリーグ戦だ。

さて結果を見るとAブロックは棚橋とAJ、Bは中邑とオカダと結局今の新日の4強が勝ち残った。そこにはインターコンチを中邑から奪った後藤も、スウィーツで全国区になったNEVER王者の真壁も、春を制した“ゴールデンスター”飯伏も、アンダーソンもファレも柴田も石井もYTRも…第三世代も食い込めなかった。それと大変身の予兆があった内藤も…。
順当といえば順当である。何となく「今年のG1で誰がスターに上り詰めるのか?」というニューヒーローを生み出す場ではなくなったようだ(内藤で懲りた?!)。
そういう波乱も無いまま両国3連戦に突入し、Aブロックは3日前の後楽園大会で「棚橋とAJの勝った方が優勝決定戦」とほぼ決まってしまった。
一方Bブロックは中邑の序盤のリタイヤでオカダが独走したものの、復帰した中邑、アンダーソン、後藤に可能性が残した状態でリーグ戦最終日に突入したが、こちらも結局オカダと中邑の本命対抗のメインイベントの勝者が抜け出す図式となった。

実はこの数ヶ月でFBのプロレスグループに入れてもらい日々色々なコメントに目を通している。G1の時期はG1の話題になりがちであるが、こんな意見が出ていた。
「どうせ優勝の可能性が無い選手や第三世代は出さなくていい。初期のG1のように厳選した選手だけでやるべきだ。」
…というようなものだった。確かに一理ある。「今=この夏一番強いのは誰か?」を決める大会なのだから、勝てそうもない選手が出ても意味がないともいえる。その意見に賛同する人もいた。が、プロレスって順位を競うアマチュア大会のような大会では盛り上がらない。去年全敗し優勝して華原朋美にプロポーズ宣言した本間がようやくつかんだ初勝利の瞬間は恐らく大きな感動があったはず。第三世代も負けが混んでいたが勝利したときの館内のボルテージはすさまじい物がある。素直にその頑張りに感動するのだ。
本間の頑張りや成長は皆が認めており好勝負製造機になった。華原朋美の件は別としてとにかく勝たせたい、けどそんな人情論が通る大会ではない。勝てそうな相手にも勝てない。今年も全敗か…。それが実力者石井を激闘の末破ったのだから喜びも感動も大きかったのだろう。
第三世代も負傷の代償もあってか負けが先行した。そんな中での意見だったが、順当に見えたAブロック最終日、内藤が天山に勝ってメインの棚橋vsAJに乱入して無効試合で両者0点になった場合、直接対決で両者に勝っている内藤が大逆転で優勝戦進出…という超裏読み都市伝説がまことしやかにささやかれていたのだが、「天山は終わっている」という内藤の暴言に激怒した天山が意地の勝利をつかんだのだ。おかげでメインは普通に「勝った方が優勝戦」となってしまったが、そんなことより反抗期内藤を制裁した我らが天山の勝利にファンは共鳴し、感動したのだ。
それはいみじくも「勝てそうもない」とファンも思っている裏返しでもあるが…。
けどそういう頑張りを見るのも、それに感動するのもG1だ。

また大会後に「元・超プロレスファン」と食事をする機会があった。以前も紹介したかと思うが、その彼はプロレスが、中でも新日が最強だと信じて疑わなかった純粋なファンだったが、新日勢が総合やK-1勢に負け続けたことで「裏切られた」とショックを受けてしまったのだ。
「いや、レスラーは年間100試合以上やるし、パワーボムを食らっても翌日巡業先で試合をしなければいけないんだから、総合やK-1戦士は絶対できないだろう、だからレスラーは強いんだ」と諭そうとすると「所詮それでも翌日試合をやれちゃうのがプロレスなんだ」と意に返さない。ならばと「後頭部にスワンダイブ式ドロップキックを食らって2.9で返せ、といわれて返せるか?」とか「トップロープから場外へのボディーアタックを受け止められるか?」と言おうものなら「そもそもそんな技、食らわない!」と…全くノーダメージなのだ。「棚橋はチャラ見せているけど年間300日ジムでトレーニングしている」というと「そんなの当たり前だし自慢するな。魅せる身体を維持するためだから当然」と褒めもしない。
おまけに「キングオブスポーツを取り下げろ」とか「キングオブサーカスかキングオブ劇団と言いかえるべし」と酔いも手伝ってエスカレートです。が「本当はプロレスが大好きなんだよ。そんな私をまたプロレスに戻して欲しい。そのためにはレスラーがそういう場に出て行って完勝してくれればいい」と言う。中でも中西がK-1ルールでTOAに負けた試合が追い打ちをかけたようだ。表向き「K-1ルールじゃしょうがないじゃん!」と言えるのだが、相手のTOAもK-1初参戦だったし、負け方が「(レスラーには)慣れないハイキックでKO」なら良かったが、殴り合いでダウンしたことがショックだったとのこと。あの、新日で一番頑丈な中西が殴り負けた、その事実が許せなかったのだそうだ。
けど巻き返す場が今や殆どなくなってしまったので、彼が“こっち”へ戻ることは永遠にないのだろうか…。
確かにG1で勝った棚橋は強かった。王者のオカダも中邑も強い。棚橋は世界1にも選出されているのでレスラーとしても世界屈指の実力者である。では彼らが最強か?他流試合でレスラーの強さを見せつけ圧勝して“彼”を引き戻すことができるか?というと確かに全面肯定はし難い。彼自身の意見も「経験のある中邑が1年以上プロレスを休んで十分準備して出て行けば勝てるのでは?」と期待しているものの、そんなことは今や無駄である。「場」もないし必要性もない。
そんな彼に何度もこう言った。「とにかく試合を見てから言ってください!」と。棚橋が世界一強い格闘家だとは誰も思ってはいない。けど世界一のプロレスラーと言われたら「そうかもしれない!」と思う。中邑も然り、オカダも然り、AJも然りである。真壁も後藤も柴田も石井も本間も飯伏も内藤も高橋もYTRも永田も天山も小島もファレもアンダーソンもエルガンもギャローズも…皆凄いのだ。
今の時代は彼が「新日本プロレスはキングオブスポーツ」と信じていた猪木の時代に比べ、はるかに技は高度に、イヤ危険になり、怪しいカウントの返し技決着も、両者リングアウト・フェンスアウトもほぼなくなり決着がつく。カードの出し惜しみも大幅に減り猪木・坂口・長州・藤波らが年に何回もシングルで戦う…。前田がいたら前田も戦う。しかも決着がつく。何ていい時代だ。
その彼に改めて言う。とにかく試合を見なさい!と。
昔の偉人?も言っていた。「迷わず見れよ、見れば分かるさ!」

《8.11 後楽園ホール》
【第1試合】●ホワイト、ドラダvsホール、〇高橋:必殺マイアミシャインで轟沈!
【第2試合】●キャプテン、KUSHIDAvsトンガ、〇アンダーソン:観客にアピールしている隙にガンスタン!
【第3試合】●小松、後藤vsフィンレー、〇エルガン:怪力エルガン大人気。旋回式のエルガンボム!
【第4試合】●田口、本間、永田、小島vsYOSHI-HASHI、石井、オカダ、〇中邑:おちょくる田口にボマイエ炸裂!
【第5試合】内藤vs〇ギャローズ:雪崩式ハングマンスヌースで内藤痛い黒星!
【第6試合】〇天山vs柴田:額が痛々しい天山がアナコンダマックス!場内大歓声!
【第7試合】飯伏vs〇矢野:YTR劇場の集大成?矢野マジックで何と秒殺!
【第8試合】〇AJスタイルズvsファレ:あわや無気力試合も場外で大乱戦の末の疑惑のフォールもノーサイド!
【第9試合】〇棚橋vs真壁:キングコングニーを回避しハイフライ弾で激勝!

この大会はG1後楽園は昨年は1試合のためチケットはレスラーでも確保しにくかったのだが、今年は3試合。とはいえ発売日に8枚ゲットしたが、ぴあは売り場オープン直後に売り切れで買えず、書泉と闘魂ショップで確保し2ヵ所に分かれての観戦だ。相変わらずイイ席にプロレス女子が陣取っている。AJとファレの場外戦が目の前で繰り広げられた。するともう1ケ所でもやってくれて8人とも喜べた。締めは棚橋がエアギターを披露し、丁寧なファンサービスを対応していた。

《8.14 両国国技館》
【第1試合】●ドラダ、本間、小島vs〇トンガ、高橋、アンダーソン:本間、こけしで救出失敗しドラダ憤死。
【第2試合】〇エルガン、フィッシュ、オライリーvs●ホール、ニック、マット:大人気エルガンがホールの巨体をエルガンボム葬!
【第3試合】KUSHIDA、中西、〇永田vsリコシェ、●キャプテン、後藤:中西のアルゼンチンアシストを受け白目式腕折り!
【第4試合】YOSHI-HASHI、〇桜庭、石井、中邑vsベネット、ターバン、●外道、オカダwhihマリア:桜庭がマリアに気を取られるがサクラバロックに捕獲!
【第5試合】柴田vs〇ギャローズ:雪崩式ハングマンスヌースで大金星!
【第6試合】〇矢野vsファレ:トンガが加勢も場外で2人まとめて急所打ちでリングに生還!
【第7試合】〇天山vs内藤:悪ぶる内藤に頭突きの嵐からアナコンダ!内藤の奇跡起こらず!
【第8試合】真壁vs〇飯伏:キングコングニーを回避してフェニックススプラッシュ炸裂!
【第9試合】〇棚橋vsAJスタイルズ:お互いの決め技をかけ合うが最後はハイフライ連弾!

両国3連戦初日はAブロックの最終戦。本来なら3日間とも1万人興行で全盛期並みの盛り上がり…といきたかったところだが、最初から2人/桝の設定で調整していた。まぁ懸命な判断だった。結果は5.658人(満員)となった。それまでが後楽園3大会だったこと、メイン以外が消化試合的になってしまったこと、翌日の方が優勝戦の行方が分からずしかもメインが中邑vsオカダの同門対決となったこと…と条件は悪かったが、いくら実数発表に切り替えたとはいえキャパの半分は問題だ。これでは来年の3連戦は厳しい。メインは好試合だったのが救いか。

《8.16 国国技館》
【第1試合】田中、●小松、ライガーvsフィンレー、ドラダ、〇田口:ギタりまくってヤングライオンいじめ。
【第2試合】キャプテン、小島、〇天山vs●ホワイト、中西、永田:猛牛全開アナコンダバイスでうっ憤晴らし。
【第3試合】YOSHI-HASHIvs〇エルガン:G1出られなかった思いを強烈なエルガンボムで打ち砕かれる!
【第4試合】桜庭、〇石井、矢野vs●トンガ、高橋、ファレ:CHAOS音頭で入場し開眼した2人急所打ちで勝利呼び込む。
【第5試合】●本間、内藤、真壁vs〇飯伏、柴田、後藤:柴田が内藤に怒りまくり、真壁と飯伏が遺恨を作った。
【休憩】2016年1.4正式決定に続き天龍登場。オカダへの対戦を外道が拒否したが本人登場で対戦受諾!天龍大丈夫か?
【第6試合】IWGPジュニアタッグ●ニック、マットvs〇フィッシュ、オライリー:ガイジン同士も大盛り上がりでタイトル移動!
【第7試合】IWGPジュニア〇KUSHIDAvsリコシェ:両者コーナーノータッチトペ敢行する大空中戦も関節葬で防衛!
【第8試合】ベネット、ターバン、●オカダwithマリアvsギャローズ、アンダーソン、〇AJスタイルズ:アンダーソンとAJがマリアに幻惑されるもオカダにスタイルズクラッシュ炸裂!王者大の字!
【第9試合】優勝決定戦〇棚橋vs中邑:何と蝶野と武藤が登場。中邑のボマイエも関節地獄も耐え執念のハイフライ弾で歓喜の勝利。試合後何と両者が健闘をたたえ合い握手!表彰はゴン中山氏も入り蝶野と武藤と記念撮影。優勝旗を壊すアクシデントも延々とファンサービスで観戦のお礼。

さすがに優勝戦は本当に超満員。前日までに優勝戦進出者が決まったのでジュニアの王座戦が入るカードになり、所属全選手が試合をした。が、やはり「誰が優勝戦に残るんだろう?」というワクワク感がないのはファン心理としてはいささか物足りない。せめて上位4人でトーナメントをやって欲しいところ。またせっかく今大会でグレてヒールになった内藤、ロス・インゴブレナプレスの仲間を乱入させて欲しかったような…。まぁ本間が脚光を浴び、エルガンがインパクトを残したので盛り上がった。中邑も早期に怪我で休場してそのままだったら盛り上がりも半減だったが、よくぞ復帰してくれた。逆に大丈夫なんだろうか…。
何はともあれG1は良かった。満足した。感動もした。行ってよかった。
棚橋が人類最強とは思えないが、最高にクオリティーの高い試合をやっているのは間違いない。ファンは大満足で帰路に着いたはずだ。

やはり先ほどの彼に改めて一言。
「黙って来年のG1を見なさい!」
と伝えておこう。

以上