10.3.5 後楽園大会観戦記

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10.3.5  新日本 創立38周年シリーズ 旗揚げ記念日 後楽園ホール


「いや~っ、プロレスって本当に素晴らしいですね!」
どこかの映画解説者のうようなセリフで始まってしまったが、今回の観戦は心からそう思った。
旗揚げ記念大会といっても、カード的にはジュニア王座戦があるものの、試合数も少ないし、蝶野はおろか長州も出ない(7日の浜松で行われた旗揚げ記念日第2弾に長州は出たが)イマイチな内容で、アニマル浜口や橋本息子を見たい訳でもない(浜口はちょっと見たいかも)。「会社帰りに観戦」以上の価値を見出しにくい観戦となりそうであった。ま、それもしゃあないか…。
しかし、終わってみれば凄い充実感。
プロレスの持つ様々なパワーを実感できたのだ。

今回はIGF大会の観戦記でも触れたが、こんな絶好の日程にもかかわらず3人だけの観戦だ。
しかも弊社執行役員(前事業部長)と元柔道部の4つ先輩とであるが、この2人は面識がないのである。何度も「あと一人誰か入れないとバランスが悪いな」「やっぱり中止にしようかな」と弱気になったのであるが、まあ「プロレスファンに悪い奴はいない」と訳の分からん理由付けをして、決行したのであった。なるようになるだろうし。
そんな脈絡のないメンバーで行ったというのに、凄く興奮して盛り上がって、感動して、反省会で熱く語り合って…きっと面識のなかったお2人の間にも強固な信頼関係が生まれたに違いない!
これがプロレスの力だ!
いったい他に脈絡のないメンバーで同じような興奮と感動を味わえるスポーツやイベントってあるか?
(えっ?!ある?ある??)
確かに昔の某上司が(あっ、本稿の読者だった!)脈絡のないメンバーでゴルフに行ってたけど、ここまで興奮と感動を共有するまでには至っていないだろう…。
凄いぜ!プロレス!
そういえば弊社の工場の女性から「JTさんってプロレスファンなんですか?」と声をかけられた。
何だか急に親近感が沸いてきた。もしプロレスがなかったら声をかけられることもないだろうし、単なる営業マンと工場にいる女性に過ぎなかったであろう…。
同じく工場でいつも無理なお願いをし続けて、少々おっかなかった先輩も、大のプロレスファン(かなり上位レベル!)だったため、その後絶大な信頼関係で仕事もできるようになったり…。
そんな力のあるスポーツやイベントってあるか?(えっ?!ある?ある??)
「私は巨人ファンです」「サッカー大好き」「実はフィギュア好き」…色々あるけどそうはいかないだろう?(えっ?!そんなこともない??)
要は何が違うかというと、プロレスファンがマイナーってことか?
まぁ、視聴率20%以上の黄金期でも、確かにマイナーといえばマイナーだったが…。
ある意味好き嫌い、というか肯定派と否定派がここまではっきり分かれるのもプロレス位か。

そもそもプロレスの魅力とは、「どんな人が見ても楽しめる」ことだ。
その昔猪木がイラクの人質解放へ向け、渦中のイラクでプロレスをやったことがあった。イラクは少なくともお隣イランがアマレスの強豪国でプロレスラーも排出している(出身地は怪しいが…)し、アブダビ(遠いか)では寝技世界一の大会を開いているから、多少は格闘技に理解がある層はいるはずだ。
が、いかにもスポーツライクではないプロレスは根付いていないはず。そんな国で誰と誰が戦っているかも不明なのに(どちらも外人)、確実に大技には驚き、粘り強さに拍手を送る。ただイラク大会のメインは確か長州とマサ斉藤組が正規軍として出たタッグ戦だったと思うが、図式を知らないイラクの観衆は長髪で目付きの悪い長州と髭面のマサ斉藤を悪役側と思って相手側を応援していたが…。
「どんな人が~」とは言い過ぎかもしれないが、素人もマニアも、初めて見る人もベテラン?も、選手や軍団の背景やこれまでの流れを把握している人もしていない人も…素直に楽しめる(我々の隣のカップルは女性が熱烈なファンで男がしらけていたようだが)。そんなスポーツは他にあるか?

さて、今回の観戦者のうち一人は観戦歴2回目という“プロレス素人”であり、選手についてもほぼ知識がない。が、柔道家である。会社の玄関で待ち合わせしていたが、“ヒクソンを倒せる逸材”といわれたN村3兄弟の長男Yと一緒だったようで、一応誘ってみたとのこと。彼はプロレス嫌いのようだ(普通あの年代でしかも格闘技を目指している男は普通プロレスファンのはずでは?)。
あっけなくふられたとのこと。そんな奴はほっとけばいい!
この柔道家の先輩はやはり見方が一般人とは違う。技のかけ方、逃げ方、体の筋肉の柔らかさ、体のどこが悪いか…そんな観点で真剣に見ている。けどそんな先輩をしても理解ができなかったのが、セミファイナルの丸藤vs金本のタイトル&対抗戦。
第一試合から試合が進むにつれ、技が高度になり、ダメージが大きくなり、試合運びや技のつなぎが高度になり、「やっぱり段々いい試合になるな」との感想だった。全くその通り。同じ技でも新人がやるのとメインイベンターがやるのでは見てる方の感じ方がかなり違う。それもプロレスの奥深さである。そんなスポーツは他にあるか?(まぁここはこの辺に止めておこう)
序盤金本が打撃で圧倒すると「丸藤弱いじゃん」と漏らしていたが、30分を超える大激闘を見ているうちに、丸藤の身体能力を見抜き勝利するや「やっぱり金本より丸藤の方がレベルが上だ」と言い切った(こらっ、新日ファンの私に向かってKYな!)。
ただ、金本が40歳過ぎ(43歳)と知るや、「本当かよ?信じられん!」と理解を超えてしまったのである。柔道家で30分戦えるのは北京五輪金メダリストの石井位だとのこと。恐らくだらだら30分戦うのですら持たないだろうが、この動きっぱなしで後半に大技・力技連発する戦いは、他の格闘技ではあり得ないだろう。そんなスポーツは他にあるか?(しつこいか:笑)
よし!俺も40代、頑張ろう!…と単純にそう思わせる。そんなスポーツ…(以下同上)。
その後のメインも今を時めく第一線の戦いだったので、セミに負けない試合内容で大満足をするのであった。あのセミの後では消化試合的な観戦になりがちだが、技の攻防のレベルはヘビー級ならではの説得力も加わって、決して色あせることもないものだった。
そんな風に純粋に思うことができたので、この何でもない大会だったが観戦した意義は大きい。

そういえば役員の逆隣に老婆(失礼!)が一人で観戦している。何やら若手に声援を飛ばすし、「裕二郎に飯を食わせた」とかいうツワモノ。役員と普通に会話をしているのも微笑ましいが、そのうち「バルコニーに移動します」といそいそと席を離れた(絶対この席の方が見やすいのに)。
因みに今回の北側G列の両サイドはその前が一段低くなっており、丁度その淵に荷物や食べ物等が置けるようになっている(バレー出身のMさんでも座っていられるかな)。その通路側なので、凄く快適な席だったのに…。年甲斐もなく大声で応援している筋金入りのファンだ。バルコニーからも声が聞き取れた。特に若手びいきなのが凄い(注:決して私の親族ではありません)。
また、いつも都内主要会場でダミ声で野次を飛ばしている奴がいるが(IGFも来ていた)、何と丸藤に声援を送っているではないか!私が観戦する大会=ほぼ新日本にだいたい来ているのでてっきり新日ファンかと思っていた。そうなるとコヤツはNOAHも観戦しているんだろうな…。
私も暇と金さえあれば(あとこのレポートを書かなくて良ければ?)、可能な限り観戦したい。
この2人(老婆と野次男)に脱帽…。

翌週は春のG1、ニュージャパンカップ(シングルのトーナメント戦)が始まる。同じ後楽園だ。優勝者は4月に中邑のIWGPに挑戦できる(これまた後楽園)。
そう思うとよくこのタイミングとこのカードで2,000人(超満員)入ったな。

新日は蝶野が去ったが王者中邑をもっと盛り立てないとダメだ。タイトル戦の両国で6,300人は王者としては失格だ。ジュニアは次はライガーらしいが、丸藤で引っ張るだけ引っ張って、どこかで奪回すればいいだろう。ただせっかくガイジン組から奪回したタッグ(裕二郎、内藤組)はいただけない。
けど何とかなりそうだ。
ヤバイのはNOAHと全日本だ。
NOAHは小橋やKENTA、潮崎がリタイヤ中で真壁や川田を借り出しても武道館がスカスカ(9,500人)だった。その王者杉浦も何と骨折でしばらく休場するらしい。
全日本は船木が登場している割に、鈴木みのるとばかり絡んで盛り上がりがイマイチだが、ここへきて武藤がとうとう膝がパンクして手術に踏み切るらしい。チャンピオンカーニバルも欠場だ。
川田はハッスルなき今、ZERO-1を主戦場にしており、NOAHに出稼ぎに出たが、全日にもでるべきかもしれない。
三沢亡き後、蝶野、武藤、小橋がリタイヤしている。
けど皆40代。たまたま同時期に重なっただけだろうが、先んじて休暇をとった蝶野はある意味賢い。やはりオーバーホールをして、戦える身体を作って、第一線で輝いて欲しい。それとともに第三世代(これもアラフォーだが)から、30代前半のエース達もよりステップアップして欲しい。
雨トーークのネタがいつまでもレジェンドに頼ってはいられないでしょ!


≪試合結果≫
【試合前】グレーテストレスラー表彰式 旗揚げ記念大会恒例(らしい)の表彰式。われらが坂口相談役がリングインするや、大声援。
柔道家の先輩が感激していた。「もうこれだけで来た甲斐があった」と。それだけの存在感はさすが“世界の荒鷲”だ。橋本の表彰は息子が受け取る。場内に「だぁーら~ん、だらーらら~ん、だ~らーんらっらっらっらららー」と前奏から(分かりにく~)「爆勝宣言」が鳴り響くや場内大「ハッシモト」コール。この息子はとても破壊王の息子とは思えない程礼儀正しく、試合後の通路で私が「頑張れよ」と肩を叩いたら、「はいっ」と返答した。ただレスラー志願というには線が細いかな。
次はタイガー服部がアニマル浜口を招きいれる。お決まりの「気合だー10連発」を大合唱。ここまで観客を乗せるのは芸の域だな…。
【第1試合】 〇田口vs吉橋
元ジュニア王者対若手の一戦。先輩田口は記念試合の第一試合らしく、黒のショートタイツでファイトしファンキーな面を封印し先輩として厳しく攻め立てる。館内はやはり吉橋びいきで声援が集まる。
中々のイケ面でセンスもいいが、先輩の牙城は崩せず、逆エビからの逆十字が決まり、たまらずタップした。田口得意の「どどん」を出すまでもなく、珍しい間接葬。

【第2試合】 〇ライガー、タイガーマスクvs●外道、グレート東郷
ライガー明らかに太り過ぎ。佐山程ではないが、お腹がポッコリ膨らんでいる。相手は記念試合なのにインディの実力者東郷。恐らく相方の邪道が欠場中だからなのだろう。
マスクマン組は悪の連携に苦戦する。タイガーはマスクに手をかけられあわや剥がされそうになった。腹の出ているライガーが掌底連打で形勢逆転すると、最後は重い空中胴締め落とし炸裂。


【第3試合】 〇中西、本間vs井上、●平澤
真壁のパートナー本間と正規軍の中西の混成タッグと青義軍の一戦。どう考えても中西と本間が仲間割れするんだろう。本間は以前はGパンで試合をしており、且つ弱いので、「その辺にいる体格のいいお兄ちゃん」と思っていたが、かなり筋肉がついており、肌艶も良い。相手が更に弱い役の青義軍だから強そうに見えてしまうのか…。
試合は序盤チョップ合戦に打ち勝った本間が井上にアニマル浜口得意のランニングエルボーを披露。2人ともアニマル道場出身らしく、師匠の前で張り切っている。青義軍が結構粘り強く攻め立てる。しかし中西組もいい連携で試合を成立させている。平澤は後半反撃に転じ健闘するが、中西のアルゼンチンに捕まりギブ。

【第4試合】 〇永田、高橋裕二郎、内藤vs飯塚、石井、●アンダーソン
新日にタッグ王座を奪回した“NO LIMIT"と永田が合体した強力タッグとCHAOSの一戦。
高橋は今まで「裕次郎」と名乗っていたが先ごろ改名した。「裕次郎」なのか「裕二郎」なのか、パンフとHPで字が違ったり、週刊プロレスではページで異なったり…。デビューしてから名字を付け足すなんて前例がないので違和感がある…。 試合は正規軍入場とともに場外戦を仕掛ける。しかし正規軍はタッグ王者の連携で巻き返す。ついでに永田の存在を無視して戦い続けるが、ファンは永田の登場を促すと強引に背中タッチで強引にリングイン。ハイペースで攻勢を続ける。何と高橋はタッグベルトを凶器代わりに持ち出して攻撃を加えようとする。そこへ仲間の永田がキックで制裁を加え阻止する。そのままバックドロップホールドで試合を制したが、その後はNO LIMITに袋叩きに。
次週のトーナメント1回戦で永田と戦う高橋が仕掛けた心理戦なのか?永田じゃないけどファンもあきれ顔。

【第5試合】 IWGPジュニア選手権:〇丸藤vs金本
1.4でタイガーマスクから王座奪取したNOAHの丸藤の2度目の防衛戦。“ジュニアのカリスマ”“番長”“アニキ”金本が挑戦する。
対抗戦らしく殺伐とした空気。両者への声援が交錯するがややホームの金本優勢か。試合前「あいつの顔はいじめられっ子」と鋭い指摘をしてきた金本は膝蹴りを中心にイジメにかかる。が場外戦を期に丸藤逆襲。頭を踏んづけたり、足を捻りながら決めたりとイヤラシく攻める。ヒールに徹して調子に乗って場外からロープにもたれる金本に向かって下からドロップキックを繰り出す。が、金本その後のコーナー弾をアンクルホールドで切り返し更にドラスクで逆襲。顔面ウォッシュ連発も3目はかわされ顔面締めに苦悶する。不知火は投げ捨てて阻止し、ソバットからファルコンアロー、更にコーナートップから投げ技3連発。丸藤グロッキーもムーンサルトはギリギリで返され絶好のチャンスを逃す。 丸藤のスワンダイブは金本下からドロップキックで相打ちに。エルボー、張り手合戦と意地の張り合いから丸藤必殺の不知火を食らうが、タイガーフロージョンはかわして必殺アンクル地獄へ。顔面キックからまたもやアンクルホールド。しかしこの絶好の勝機もロープに逃げられる。金本ムーンサルトの着地で左膝を痛めると失速。コーナートップから不知火・改を食らいカウント2でギリギリ返すがポールシフトで30分を超える激闘に幕。丸藤ヘロヘロも大拍手(チクショー)。マイクで「マジで最強の43歳でした。俺もあんな40代目指して頑張ります」と。
リング上ではタイガーが残って睨みつける。そういえばリマッチまだだ。タイガーが奪回するんだろう。
…と思っていたらインタビュールームでライガーが挑発し次期挑戦が決定した。一応年齢不詳(笑)だが、こっちも40代。まずはお腹を引っ込めないと。
丸藤はNOAHでは“いいもん”だが、ヒール役もできるんだと、金本によって幅を広げられた。

【第6試合】 棚橋、後藤、●真壁vs〇中邑、矢野、田中
恐らく今年のベストバウト候補の一戦の後のメイン。記念試合だからか真壁が正規軍側に合流しての6人タッグ。本間は中西と仲間割れしなかったが、真壁はきっと裏切るに違いない。相手は因縁のCHAOS最強軍にZERO-1田中が合体。
試合はCHAOSが後藤を孤立させて優位に進める。髪の毛を賭けて因縁の棚橋と矢野はこの試合でも髪の毛を引っ張って相手を倒す。中邑厳しいキックも棚橋ドラスクで真壁につなぐとノリノリでラリアット連打。CHAOSのトレイン攻撃は後藤がナイスカットするが、真壁は中邑にダイビングニーをかわされボマイエを背中に被弾。タイガースープレックスはカットされる。真壁ラリアットからパワーボムも分断され、最後は正面からのボマイエ食らい轟沈!GHCに挑戦した“スーパースター”から3カウント奪った中邑は、次週開幕のニュージャパンカップ優勝者の挑戦を受ける。「頼むから強えぇ奴が上がってこいよ」とマイクアピール。
真壁は負けたので?仲間割れもなく大人しく引き上げた。
けどさすがこのクラスのメインだけあって試合は盛り上がった。


以上